ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『相棒 Season 7』「第17話 天才たちの最期」

 小さな出版社の若い女性の編集者の若い女性である瑛子が、自殺した大学生の安原は自殺ではないと警視庁に訴えってきた。捜査一課は彼女を杉下右京に押しつけ、話を聞くことになった。

 安原が自殺したと判断されたのは、東都芸術大学に通う天才詩人といわれた安原という男で、城戸幸四郎ゼミ卒業朗読会で、彼は朗読会の途中に紙コップに入った水を飲んだところ死んでしまったという。紙コップの水には毒が入っていたこと、毒を入れることができるのは安原本人しか考えられないことから警察は自殺と判断したのである。

 瑛子は、朗読会において、詩を書いた巻物を広げたところ、戸惑ったような表情をしており、また自らの出版社で、卒業後処女詩集を出版する予定だった安原が、自殺をするはずがないと訴えるのだが…。

 鑑識課の米沢によると、舞台に置かれた固定された紙吹雪があり、それを目印にして、暗闇でも安原の紙コップに毒を混入できたのではないかと推理する。その機会をもちうる可能性がある席にいたのが、詩壇の重鎮で安原の師匠である五十嵐と大学ゼミの指導者である城戸だった。右京は、彼ら2人を捜査する。

 瑛子の上肢である出版社の時創舎の社長の堀江が、似たような自殺した事件が7年前にあったという。梅津という若い女性は、五十嵐の詩からの盗作の疑いを受け、安原と同様に郎読会の舞台上で毒を飲んで自殺していたのである。

 また、毒の入手先をインターネットで調べてみると城戸が購入していたことがわかった。捜査の過程で梅津の作品ノートを五十嵐がもっていたことを突き止めた。五十嵐に問いつめると、そのノートを城戸に渡していたこと、そのノートから盗作をしたことを認めたのである。そして詩を書けない詩人である城戸を安原は糾弾していた。犯人は、五十嵐か城戸なのか…?

 結局は、他殺に見せかけた自殺というある種の定番の設定であった。時創舎の社長の堀江が、安原が病魔に冒されて自殺することをかぎ取り、安原に7年前の盗作事件を明るみに出すために、安原に他殺に見えるよう依頼したのであった。しかし、その自殺のきっかけが、若年性アルツハイマー病だったというのは、若年性アルツハイマー病の発症は40代からだから、20代前半で発症というのは早すぎるんじゃないの、と疑問に思う。それでも、結構凝ったミスディレクションがあり、☆☆☆というところ。