ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『予想脳 Predicting Brains』藤井直敬、岩波書店、2005

 脳の仕組みを理解するものとして「予想脳」とう概念仮説を解説したもの。おおざっぱに言ってしまえば、人間の脳は物事を予想して判断処理をしているという考え方(たぶん正確ではない)は、演者は忘れてしまったけれど、数年前に行われた脳と運動の講演において、同じような概念を訊いたことがあるので、それについてかなと思ったのである。実際は違う者だったけれど。

 脳の処理の曖昧さから脳の仕組みを考える脳科学は、証拠から犯人を追いつめる謎解きミステリのようで面白い。本書も、あくまで仮説だから、もっともらしいようにも、あるいはトンデモ仮説のようにも感じる。本書では、脳の働きにはテンプレがあり、それがある程度経験的に予想をして、実際には細かい微調整をしているという考え方は面白い。しかし、その仕組みを追った前半が面白く、後半は社会を結びつけようとしていて、正直ピンとこない。☆☆☆★といったところ。

岩波科学ライブラリー 予想脳 Predicting Brains (岩波科学ライブラリー (111))

岩波科学ライブラリー 予想脳 Predicting Brains (岩波科学ライブラリー (111))