タイトル通り、「日本版エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」初代編集長の都筑道夫が、ハヤカワ・ミステリ・シリーズ、通称「ポケミス」で担当した解説を一冊にまとめたもの。それに加えて、日本版EQMMに連載されていた「ぺえぱあ・ないふ」も収録されています。わたしは、ポケミス解説だけでしたら購入しなかったですね。また、ポケミスですので、SFにも言及されております。
最初の作品が、クレイグ・ライス『大あたり殺人事件』(211、1956年)で、最後の方では、カート・キャノン『酔いどれ探偵街を行く』(794、1963年)を扱っています。そのくらいの年代に出版された本を対象にしております。印象ですが、レイモンド・チャンドラー、マーガレット・ミラー、コーネル・ウールリッチ、アンドリュウ・カーヴ、スタンリイ・エリン、ウィリアム・P・マッギヴァーン、ジョルジュ・シムノン、F・W・クロフツ、エド・レイシイ、ロス・マクドナルド、エド・マクベインなどが、どのような位置づけで現れたのかよくわかります。
今回、急ぎ足でしたが、一通り読んでみますと、ジャンルが成長する流れというか、悩みというか、方向性はいつの時代になっても変わらないものなのがわかります。
例えば、C・H・B・キッチンの『伯母の死』において、本格探偵小説の衰亡とイギリスの現状について以下のように書かれています。これらは現代では乗り越えた命題ともいえますね。
(中略) しかし、もっと大きな原因があるように思われるのだ。それはなにか? 小説自体がもっている問題が、そこにある。作家自身の問題といってもいい。小説は、いや、小説ばかりに限らない。通俗的なものであろうと、恒久的なものであろうと、芸術はつねに前進しなければならない、という宿命を持っている。(中略)
探偵小説もまた小説である以上、一ヵ所とどまっていることは、許されない。今日の小説であることは、許されない。今日の小説でなければならないのだ。(中略)
謎の骨格の露呈した本格ものの不自然さに、まっさきに耐えられなくなったのは、おそらく作家自身だろう。ことにイギリスのように、小説の世界にも確固たる伝統を持っている国では、新人作家は過去に目をつぶることは出来ない。(中略)(70ページより)
- 作者: 都筑道夫,小森収
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- 発売日: 2009/02/20
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