文学少女シリーズ・第2作目。テイストとしては第1作目『死にたがりの道化』と同じで、カバー紹介には「ビターテイスト」とされていますが、誰も幸せにならないという点で「トラジディ(悲劇的)テイスト」に近いです。そういうものが好きな人、人生はそういうものだと感じる人にとっては、絶好の作品。第1作目の感想に「ロス・マクに似ている」と記しましたが、本書も同様でした。それは、現代ではなかなかできることではなく、オドロキなのです。
また、第1作目のストーリーがひとつのテーマに上手く収斂していき、読者にカタルシスを起こしていましたが、本作では、単なるその繰り返しではなく(繰り返しでも良かったのですが)、それを乗り越えるべく、少し時間的にスケールの大きなものとしており、作者の大いなる意欲を感じます。まるで、『新宿鮫』で注目を浴び、自作の『新宿鮫2―毒猿』で、パターンを変えてきたかのように。そのため☆☆☆☆の評価をつけます。
ある日、文芸部の恋愛相談ポストに、“憎い”“助けて”“幽霊が”などの言葉や、“43 31”などの意味不明の数字の羅列が鉛筆で書かれた紙切れメモが入っていた。数日ポストを張ってみたが、遠子先輩と心葉には、誰が投函したのかわからない。
学園の理事長の孫でありOBなど情報源にことかかないオーケストラ部長で女性指揮者の姫倉麻貴先輩に相談した。「ねえ、謎のメモの犯人は、もしかしたら本物の幽霊かもしれないわよ? 校内を夜な夜な彷徨い歩いて数字を書き残す幽霊が“出る”って話、OBから聞いたことあるわ」
放課後、学校に残って、ポストを見張っていた二人は、ついに夜10時過ぎに、闇の中から夏だというのに冬の、しかも昔の古い制服の少女がメモを書いてポストに入れたのを目撃したのである。遠子は、その少女に声をかけると九條夏夜乃(かやの)と名のって、その理由を聞くと、「ふふ、そんなの無駄だわ。だってわたし、とっくにしんでるんですもの」と言って駆けていった。
作者があとがきで、本書の題材は『嵐が丘』であると明かしているのですが、私は『嵐が丘』を読んだことがないのであり、読みながら思い出したのが、イーデン・フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』。イギリスの地方貴族を舞台にした、謎解きミステリで、その内容に似ていたもので。今回、『嵐が丘』も読んでみようかという気になりました。
- 作者: 野村美月,竹岡美穂
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 文庫
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