ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡』 宮崎 駿、ロッキング・オン、2002

 渋谷陽一氏による宮崎駿氏へのロングインタビュー5本を集めたもの。渋谷氏がアニメ的なアプローチではなく、一人の映画監督としてインタビューしているので、ちょっと他とは視点が異なっています。6月5日に放映された『千と千尋の神隠し』を流し見て、積ん読だったものを引っ張りだして読みました。

 それにしても、『千と千尋』は赤味がひどかったですねえ。記憶にあったものより、もっとひどくなっているんじゃないのと思いました。白い積乱雲が赤いんですもの。劇場版で見ていてよかった。いつか、いつかスペシャルエディションでもいいから、白いDVDを発売してほしいものです。あと宮崎氏は、諸星大二郎の影響も受けていますが、小林まことの影響も受けているんじゃないですかねえ。そんなの読んだことないけど。小林まことのようなヤンキー臭が少し入ったものは受け入れないかな?

 そんなわけで本書ですが、なるべく喋ったことを忠実に起こすようにしていて面白いです。『カリオストロ』『ナウシカ』『ラピュタ』『トトロ』で一通り一周してしまった。だから、『魔女の宅急便』と『紅の豚』を制作することになったこと。『豚』なんて企画書を出したら通ってしまった、というようなニュアンスのことを喋っていますからね。

 その間、映画制作が始まったら中断し、映画が出来たら連載を再開するなどで、断続的に続いていた『マンガ版 風の谷のナウシカ』が、あのような「闇の中の光」というような混沌とした史観で幕を閉じた。その後、『魔女』『豚』の路線と『マンガ版ナウシカ』の路線を統合させたものとして『もののけ姫』が生まれたのじゃないかと渋谷氏が訊いて、宮崎氏がしぶしぶ肯定している様が書かれているところが、興味深かったですね。

風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡

風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡