ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『切断』 黒川博行、東京創元社、1989→2004

 黒川博行氏の11作目の作品。本作は、謎解きというよりも、警察ミステリ小説。とにかくダークでサイコなので、テイストは折原一氏に似ている。

 彼は、ある真夜中、病院に親友して、糖尿病性腎症治療のため入院中の水谷という男の頸動脈を包丁で切断し殺した。殺人者は、死体となった水谷の耳を切り取りポケットに収め、その耳の穴の中に、持参した左手の小指を指して逃亡したのである。その小指も死後切り取られたもので、沢木という暴力団傘下の金融会社に勤めていた男らしい。大阪府警捜査一課の久松刑事らは、沢木の死体探しと殺人犯を捜査するのだが、沢木は見つからず、沢木の妹も失踪していた…。 

 サイコサスペンス小説としてテンポよくすぐに読み終えることができる。犯人が何故死体の指を切断したか、その理由に説得性がある。☆☆☆★というところ。視点が、犯人側からと、警察側からの二つを交互に描写されており、後半になるにしたがって犯人が誰だか分かる仕掛けになっている。私は、犯人は別なのでは、叙述トリックなのでは、とハラハラしたのだけど、そうではなく残念だった。全体のボリュームが300ページ強と手頃である。

切断 (創元推理文庫)

切断 (創元推理文庫)