ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『死者はよみがえる』 ディクスン・カー、橋本福夫訳、東京創元社、1938→2000

 ギデオン・フェル博士シリーズ23作中の8作目の長篇作品。カーは1930年に24歳で作家デビューですので、32歳のときの作品でしょうか。同年に代表作の一つの『曲がった蝶番』を発表しており、カー全盛期としてもよいでしょう。ストーリーの展開などに余裕が感じられます。

 ホテルの一室で、顔面を殴りつけられ、絞殺された女性の死体を若者が発見した。その若者は、いち早く警察に訴える。その2カ月前に、その女の夫が同様の方法で殺されており、夫婦を殺した犯人は同一人物と疑わしいと思われた。その夫の殺害現場には、赤いインクで書かれた連続殺人の予告カードが残されていたのである。連続殺人事件なので、二つの事件の関連性を調べ、容疑者を絞り、彼らのアリバイを調べていくのだが、なかなか犯人を絞りきれなかった…。

 フェル博士によって、最後は本作品の犯人を明かされるところは、ハラハラするのですが、あの女性が殺されたときのアリバイ破りは、まあ伏線は張られているものの、それはないよなという感じ。だって、第二の殺人時に、刑務所にいたというアリバイをもつ人物が犯人というのはね…。その刑務所を設計し建築した人物が、抜け道を造っていて、犯人はその息子で、それを知っていたから、そのすきに抜け出して、ロンドンのホテルで殺人を犯したというのは…。

 また、殺人事件から、一日しか時間がたっていないからといって、ホテルの一室で、死体を囲みながら、捜査を行うというのは、ちょっとおかしかったですね。おいおい、検死しないのかなってね。遺族も呼ばなくてはならないだろうし。

 とびきりの傑作ではないけれど、そうまでして読者に犯人を当てさせるものかという迫力を感じて、☆☆☆★です。まあ、カーのファン向けの作品。

死者はよみがえる (創元推理文庫 118-8)

死者はよみがえる (創元推理文庫 118-8)