ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『ブルー・ヘヴン』 C・J・ボックス, 真崎義博訳、早川書房、2007→2008

 C・J・ボックスは講談社文庫などから邦訳されたものが数点ありますが、私は読むのは初めて。書評などでも引っかからなかったと思われます。本書は、2009年度のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長編賞受賞作ということで、引っかかりました。

 端的にいってしまえば、ハリウッド映画流のアメリカン・エンターテインメント。誰もが共感できるように普通のキャラクターの主人公とハラハラするストーリーでよくできています。

 12歳の姉とその弟は、田舎の森の中で、数人の男が一人の男を射殺しているシーンを目撃してしまう。目撃したことがばれてしまい殺人者から逃げる姉弟は、老人が一人で管理している牧場に逃げ込み、その老人は二人をかくまうことを決意する。殺人者たちは、ロサンジェルス市警を引退した元警官4人組であり、保安官に協力を申し出て、失踪したと思われる姉弟を彼ら自身で捜索するように手配した。老人は、姉弟のいうことを信じ、元警官と対立することを選ぶのだが、元警官どもも老人がかくまっていることを知ることになった…。

 取っつきやすく、善良な無力な主人公と邪悪の強大な力をもつ敵役のわかりやすい構図がサスペンスをフルに引き出しております。元警官たちが引退した後、田舎に安寧に暮らせるところを「ブルー・ヘブン」と呼び、そこで昔の犯罪がばれてしまい、仲間割れが始まる。そして彼らの犯罪を追う、執念の刑事。それぞれに人間らしい事情があり、共感をもたらしてくれるところなど、非常に上手いです。しかし、私にはちょっと合わず☆☆☆★というところ。

ブルー・ヘヴン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-1)

ブルー・ヘヴン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-1)