本書は、北村薫さんが早稲田大学文学部で行った「表現の授業」をまとめたものです。まえがきによると、講義そのものは生徒作の掌編小説を読んでの検討が6〜7割を占めており、本書はそれらの前提にある総論的なところを使用しているそうです。したがって、文体は講義口調で非常に読みやすいものとなっています。後半の編集者インタビューが興味深い。
唐木 先ほど《自分探しの小説》といいましたけれど、これが、すごく多いんですね。女性が書く場合がほとんどです。(中略)
じゃあ、男はどうかというと、これは発表されていない作品も含めてなのですけれども、《根拠なきモテ系小説》といわれているものが多い。主人公が何となく日常を送っているのですけれども、何となく女の子にもてる。なぜもてるのか、なぜ人間的に魅力があるのか、そういったことが全く分からない。そこで、その《根拠なきモテ系》というのは残念ながら僕のネーミングじゃなくて、町田康さんが呼んでいるんですけれども、《あ、うまい言い方だな》と思いました。でも、これ、僕が男だからかもしれないのですけれども、こちらって、女性の《自分探しの小説》おりは割合と読めちゃうんです。でも、これを女性の編集者が読むと全く読めないという。(229〜230ページより)
うーむ…。女性が書くのが《自分探し小説》で、男性が書くのが《根拠なきモテ系小説》ですか…。
北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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