ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『キマイラの新しい城』 殊能将之、講談社、2004→2007

 殊能将之氏の第7作目の作品にして最新作。珠能先生の作品は、一筋縄ではいかず、肩すかしを喰らわせられます。また、特徴的で魅力的なのは文体なのではないでしょうか。シンプルで全く情緒的ではなく、そのうえ一つの言葉に複数の意味をもっているかのようで、読んでいる間は何か頭の中がグラグラしてきます。それゆえ、ストーリーそのものがよく理解できなくても、読まされてしまいます。

 ストーリーとはいいますと、探偵の石動戯作とその助手のアントニオが、千葉のテーマパークのなかにあるフランスから運ばれ建てられた古城のシメール城を運営している会社から、呼ばれるところから始まる。その運営会社の社長の江里は、750年前のシメール城の城主である稲妻卿エドガー・ランペールが取り憑かれていて、「750年前に私を殺した犯人は誰なのかを調査してほしい」という依頼があったのだ。二人は、適当にでっち上げてしまおうとするのだが、古城の密室といわれる部屋で殺人が起こった。いっしょの部屋にいた江里が疑われるのだが…。

 正直いって、どのように評価したらよいのか、わかりません。SFなのか、ミステリなのか不明な設定と展開。迷探偵ともいえる主人公。まったく推理することができないエンディング。私は、コントのように発想を愉しんで読みました。そういう意味で本書は、誰にも勧められるものではないのですが、☆☆☆★というところでしょう。さて、珠能氏の次作はいつ発行されるのでしょうか?

キマイラの新しい城 (講談社文庫)

キマイラの新しい城 (講談社文庫)