ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『“文学少女”と繋がれた愚者』 野村美月, 竹岡美穂,エンターブレイン,2006

 文学少女シリーズ第3弾。今度は、武者小路実篤『友情』をモチーフにした物語。

 遠子が学校の図書館から借りてきた『野菊の墓』の1ページが切り裂かれなくなっていた。その犯人を捜してみたところ、心葉のクラスメートの芥川だった。一方、来るべき文化祭で演劇を上演すると宣言した遠子は、芥川、竹田、琴吹を誘って、『友情』を演じることになった。しかし次第に芥川の様子がおかしくなっていく―。

 相変わらずのシリーズで、本作も、一人の登場人物が過去に起こした過ちを原因とした悲劇に、遠子そして心葉がからんで、それぞれが傷ついて、そして解決を見せてくれます。コメディ的な要素と悲劇的な要素のバランスが絶妙です。☆☆☆☆ですね。

 しかし本作では、遠子も心葉も琴吹も、何らかの過去を隠しており、それらは断片的に語られつつも、次作にもちこしております。それが不満といえば不満ですかね。

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)