ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ライトノベル作家のつくりかた―実践!ライトノベル創作講座』浅尾典彦, ライトノベル研究会,青心社,2007

 とにかく編者がもつ「ライトノベル作家を作ることができる」ということを伝えたい想いと熱気が伝わる良書。5人のライトノベル作家のインタビューから始まるのですが、その一人も読んでいない私にも、その内容が面白いのですから。編集が同人誌的なノリなのですが、それがすべて良い方向に転じており、初期の『ぱふ』を思わせます(これは私にとって最大級の褒め言葉)。……デザインや校正など甘いなあと感じるところがあるのですが。

 まず最初に、榊一郎氏、五代ゆう氏、あらいりゅうじ氏、浅井ラボ氏、三田誠氏への「作家になったきっかけ」「独自の創作方法」「教育において指導に力を入れている部分」「ライトノベル界の現状に対するホンネ」「ポリシー」などについてインタビューし、それに続いて20名以上のライトノベル作家に対して、同様のアンケート調査を行っています。

 このインタビューを受けた方々が、それぞれの方法論をもって成功しており、その方法論が非常に興味深い。職人型、天才型、努力型などがあり、そのなかで更に細分化されていることが分かります。どのようにして大量生産しているのか、よく分かりました(榊氏はマクベインやウエストレイクのように何で複数ペンネームを使用しないんでしょうね? 出版社が嫌がるのですかね)。

 その次にライトノベル界の現状を解説し、創作の方法論を述べて、最後に若手ライトノベル作家の3名の鼎談があり、作家デビューするまでと現状の不安を吐露していて、それがまた面白い。

 編者+ライターの浅尾氏は、専門学校の講師をしていて、本書の企画を出されたそうです。大手の出版社のものですと、読者に読みやすくするようもっとスタイリッシュに無駄な部分を省いてしまいがちですが、その無駄と判断される部分を、浅尾氏は無駄ではなく、ライブ感が大事なんだとして編集しています。それがホットに伝わります。

ライトノベル作家のつくりかた―実践!ライトノベル創作講座

ライトノベル作家のつくりかた―実践!ライトノベル創作講座

 そういえば、榊氏が以下のように話していましたが、これって、矢作俊彦+司城史朗氏が実践していることですね。『ミステリマガジン』で連載している「犬なら普通のこと」の第1回目で矢作氏が脚本を書いて、それを司城氏に小説化したものとエッセイに書いていました。

榊氏……あと面白いのが、アニメの脚本をやってて思ったのですが、脚本というのは、「シリーズ構成の人が大まかなプロットを作って投げる」んですよ、原稿用紙一枚くらいで。そしたら、次に脚本家がそれを原稿用紙五枚位に直す。さらに次の工程でそれをちゃんとした「脚本」に書き直す。そうやって段階的に完成させるのですが、最近フト思ったのが、「さらに小説の表現に直す」という工程をひとつ付け加えれば「実はもの凄く効率的な“お話を制作する方法”なんじゃないか」と。一度やってみようと思っています。
イン……「マンガの分業システム」のような感じですが、そんなことをやっている人は小説ではまだいないと思いますよ。
榊氏……いや――試みている人はちょこちょこあちこちに居たりするんですけどね。あまり表に出なかったり話題にならないだけで。