ニューヨーク地方検事局の精神医の顧問ベイジル・ウィリング博士を探偵役にすえた全13作シリーズの11作目の作品。私にとって初のヘレン・マクロイです。いやあ、こんなによい作品とは思いませんでした。
出版社社長宅で行われたパーティで、その出版社の看板作家でベストセラー作家であるエイモス・コットルが毒殺されたところまでが中盤。
「幽霊の2/3」というクイズを出し合うゲームでの最中だった。エイモスの印税などの契約に不満を漏らす妻のヴィーラ、通常よりも高い契約をしているエイモスのエージェントのオーガスタス・ヴィージー、送られて来た原稿の中からエイモスを発掘したヴィージーの妻のメグ、出版社社長のアントニー・ケイン、アントニーの妻でエイモスと不倫をしているフィリッパ、エイモスの作品に対して好意的な批評をする文芸評論家のモーリス・レプトンなど、そのパーティのゲームにかかわったなかに殺人の動機をもつような者はいないと思われた。
そのパーティに招待されていたベイジルは、警察に協力して捜査を始めたところ、エイモスの著者略歴は裏付けされたものがなく架空のものだった。ベイジルは、オーガスタスやアントニーなどに出版に至までの経緯をうかがったり、エイモスが過去にアルコール依存症で入院していたと思われる病院とその関係者を調査し、エイモスに該当する人物を見つけ出す。しかし――というお話しです。
発表された時代が時代なので、スピーディさは少ないものの、不可解的要素から意外な結末まで、ほとんど文句がありません。当時の出版界の事情についても詳細に語られるのですが、それさえも伏線なのかそうではないのか判然としないことなど、それが欠点ではなく利点になっているところなど、うまく書かれています。☆☆☆☆★です。
- 作者: ヘレン・マクロイ,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/08/30
- メディア: 文庫
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