ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『異人論―民俗社会の心性』小松和彦,筑摩書房,1985→1995

 〈異人殺しのフォークロア〉をキー・コンセプトにした論文集である古典。「異人」とは「民俗社会の外部に住み、さまざまな機会を通じて定住民と接触する人びと」(13ページより)のことをいいます。その異人殺しをメインとした民話を元に、どのような民俗だったのか、その心性を論じていて非常に面白いです。

 小松先生の論文が面白いのは、庶民であれ高貴であれ、心の闇を肯定的に照射しているところにあります。現在の観点から見ると、不気味としかいいようがない説話があるのですが、それはそういうものであるという視点が安心するのです。

異人論―民俗社会の心性 (ちくま学芸文庫)

異人論―民俗社会の心性 (ちくま学芸文庫)