私立探偵ジョン・カディ・シリーズ第4作目の作品。私は、ヒーリイの作品を一作しか読んでいません。著者は、ニューイングランド法律学校ボストン校法学教授で、カディは知性派探偵とうたわれていても、私立探偵スペンサー・シリーズの影響を受けていると聞くとねえ…手を引いちゃいます。
私立探偵のカディは、離婚訴訟中のハンナが夫のロイとの交渉に立ち会って欲しいという依頼をハンナの弁護士から受けた。カディは実際にロイに会ってみると、蛇のようなサディストの雰囲気をもっている危ない男と感じた。財産分与、とりわけ豪邸の分配に不満をもったハンナは、ロイとの交渉を決別した。ロイのひどさに、その場にいたカディはロイに脅迫めいた暴言を吐いてしまったほどだった。その後、ハンナが自宅に戻るとハンナの娘が飼っていた猫が惨殺されていたのである。カディはロイに抗議に赴いた。
その数日後、ホテルの一室で、売春婦が銃殺され、ロイがその部屋の窓ガラスを突き破って高層から落ちて死んでしまった。その売春婦を撃った銃はカディのものであり、その銃が殺人現場に落ちていたので、警察がカディを逮捕したのである。カディの容疑は晴れたのだが、自分を陥れようとしたものは誰なのか、犯人を捜すのだが…。カディはロイの周辺を調査すると、ロイは麻薬の売買に絡んでおり、ロイが持っていたはずの麻薬を奪おうとカディは密売人に襲われてしまった…。
途中でカディを陥れた人物を捜し出すのですが、まったく意外ではない人物だったりするところが、むしろ意外性なのかと思わせてしまいます。好意的に考えてみると、サイコめいた人物という点で新しかったのかもしれません。しかし、カディのキャラ設定に知性も体力も取り入れており、強烈な特長も弱点もないので、いまいちな感じをもってしまいます。☆☆☆といったところです。
死の跳躍―私立探偵ジョン・カディ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: ジェレマイアヒーリイ,菊地よしみ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1991/07
- メディア: 新書
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ちなみにスペンサー・シリーズの初期は大ファンだったんですよ。『初秋』までは傑作揃いだと思いますし。ただ、『残酷な土地』を境にして、まったく文章が読めなくなってしまったんです。字面を追っていっても、上滑りするだけで、キャラクターがまったく頭の中で浮かんでくることがなく、ストーリーも追えなくなってしまい、最後まで読み終えることができなくなってしまったのです。これは『残酷な土地』だけなのかと、その後の作品である『儀式』も手にとったのですが同じことに。もう一度『初秋』以前のものを読むときちんとストーリーを追うことができるんですけどねえ。
したがって、これは、パーカーあるいは翻訳者の文章そのものが、変容したためではないかと思うのですが、それを誰も指摘している人がいないのが不思議。『残酷』から風景の描写が少なくなり、キャラも類型的になり深みにも欠けてしまっているような気がするのですが…。しかし、新作のあらすじを読むと結構面白そうに感じました。