ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年』元川悦子,スキージャーナル,2009

 1999年にワールドユースを準優勝した世代である「黄金世代」についてまとめたノンフィクション。1章「黄金世代誕生の背景と軌跡」とし、この世代が生まれた時代とどのように育てられたかを年代順に追って総論と位置づけ、2章「黄金世代証言集」では、小笠原、南、中田浩二、市川、大島、酒井、羽生、稲本、遠藤、本山、加地、永井、高原、小野などのインタビュー集で各論とし、3章「黄金世代を超えるために」で総合分析をしたうえで、黄金世代以降の年代での問題点と対策を提言しています。

 著者のいいたいことは、黄金世代の出現は突然変異ではなく、計画的に育てようとしたことに加えて、Jリーグの発足とともに時代とうまく寄り添ったことではあるが、その計画的に育てることが忘れられたために新たな世代が生まれないことであることと新たな環境の提言であります。

 この著者の文章は、新聞記事としてよく目にするのですが、取材した事実と著者の考えの区分がきちんとなされていないため、読んでいて非常に疲れるので正直いって苦手でした(1章はそうなっていましたね)。しかし、2章のような証言集はそのようなことがないため、面白いものになっています。

 1つ疑問に思うのは、黄金世代以降の若者が、個性がない、コミュニケーション能力がないと何度も提言していることです。それは本当なのでしょうか? そんなことは、我々の世代でも上の世代から何度となく言われてきたことで、上の世代から見れば、その個性が見えなくなっているだけに過ぎないのではないかと思うのですが。