ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『相棒 Season 8』「第8話 消えた乗客」

 ある夜に仕事で車を走らせていた右京と神戸は、路肩に運転手も乗客もいない路線バスが停車していたことに不審に感じたため、中に入ってみると、バスの床には出血のあとがあった。警察を呼び捜査を始める。バスには、4名の乗客のものと思われる持ち物と「カミジョウマナブ」というカードが残されていた。その後、バス会社に1億円を要求する脅迫状のファックスが届いたのである――。

 ある警察署に犯人から逃げ出したひとりの女の乗客が現れた。その女は、「カミジョウ」は犯人ではないかといって、昨夜のバスの状況を話し始めた。若い男がナイフでバスの運転手を脅してバスを止めるようにしたが、誤ってバスの運転手の腹を刺してしまった。脅迫者は空き地にバスを止めるよう命令し、4名の乗客と運転手を止めてあったライトバンに乗るように命令した。乗せられた4名のうちのひとりの女は車から飛び降りて難を逃れたと。

 右京と神戸は、バスの運転手の中島の交友関係を洗うと、中島は元高校教師で2年前に恋人を自殺で失っていた。一方、上条は発見され逮捕されたが、事件当夜にアリバイがあり、すぐさま釈放された。上条でなければ誰が犯人なのか――? 

 右京は、中島が上条を殺そうとしているところを説得し止めさせる。中島は、上条が中島の恋人を殺していたことを1カ月前に知って、上条の居所を知るために、バス乗客誘拐の狂言をうったのだった。その中島の恋人の殺人を教えたのが、バスから逃げた女で、その女との共犯だったのである。しかし、殺された女の部屋に残されていた「アジサイの花」から、女の恋人は中島ではなく、その狂言の女だったのではないかと右京は追い詰める。
 「消えた〇〇」という謎がミステリらしくって非常によいですねえ。しかもコンパクトでムダのないエピソードでありながら、どんでん返しが1回どころか数回あり、なかなか素晴らしい脚本でした。本当に久しぶりのヒットで☆☆☆☆です。一カ所、ミスディレクションもあって、しっかり引っかかってしまいました。