ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『厨子家の悪霊』山田風太郎,角川春樹事務所,1997

 山田風太郎のミステリ短編集。『厨子家の悪霊』『殺人喜劇MW』『旅の獅子舞』『天誅』『眼中の悪魔』『虚像淫楽』『死者の呼び声』など7編を収録。登場人物の書き込みが少ないため、ちょっとシンプルな感じがしますが、ストーリーはそれぞれ工夫を凝らされており、長篇のプロトタイプといった感じ。『殺人喜劇MW』ですら、軽い作品にみえる。

 『厨子家の悪霊』は、どんでん返しを5回ぐらい行っていたり、『虚像淫楽』は全編ほとんどが謎解きだけだったり、『死者の呼び声』は手記の中に手記があり、さらにその中に手記があるという飛び道具の使い方をしています。

 そのような意味で京極堂シリーズに似ています。いや、ひょっとしたら、京極堂シリーズの元ネタが山田風太郎の短編なのでしょうか? 『女郎蜘蛛の理』はクリスチアナ・ブランドが元ネタというか、偶然似てしまったのでしょうけど。