ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『十日間の不思議』エラリイ・クイーン, 青田勝訳,早川書房,1948→1976

 犯罪研究家エラリー・クイーン・シリーズ全33作中18番目の作品。『ローマ帽子の謎』が1929年の作品ですから、それから19年経っていますので、中期の作品ですね。

 ハワードという男が、自分の記憶喪失の発作中に何をするかわからないことについて恐怖心をもっているため、エラリイに対して、発作中の間を監視してほしいと依頼してきた。ハワードが住んでいるライツヴィルの屋敷に招かれたエラリイは、突然ハワードにハワードがホーン家の養子であること、義母のサリーと恋に落ちてしまったことを告白される。そのサリーとの手紙が盗まれ、脅迫者に脅迫金として25000ドルを要求されているからだった。義父のディードリッチの金庫から25000ドルを盗んで、事なきを得たのだが、さらに脅迫者に25000ドルの脅迫を受けてしまった。その金をディードリッチの宝石を質草にして金を工面したが、ディードリッチに宝石泥棒を追及されて、なんとエラリイがその犯人として押しつけられてしまった。怒ったエラリイはハワードの依頼を反故にしてニューヨークへ帰るのだが、その途中に犯人は誰か、犯人がディードリッチを殺す計画を立てていると推理したエラリイは、屋敷に戻る。しかしディードリッチではなくハワードがサリーを絞殺していたのだった…。エラリイはすべての犯行と犯人を指摘するのだが…。

 初読だと思っていたんですけど、エラリイが語る事件の説明まで進んで、「あれ? このシーンは何となく覚えている」と気づき、エラリイがアナグラムについて説明する段階になって、ようやく2度目と確信したぐらい、まったく事件の概要そのものは覚えていませんでした…。でも、トリックそのものは心理的なのですが、ひねってあってとても素晴らしいと思いますね。これが現代に翻訳されたら、ベスト10には入りますね。☆☆☆☆というところです。

 解説の鮎川哲也が思いっきりネタバレをしているのが笑えます。しかも、本書を読む前ではネタバレと分からないけど、読んだ後だとネタバレと分かるように微妙な書き方になっているんですよ。でもまあ、カンの良い人には犯人が誰だかわかってしまうから、読まない方がいいでしょうね。

十日間の不思議 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-1)

十日間の不思議 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-1)