ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

ロバート・B・パーカー氏が死去

 下記の記事によると、ロバート・B・パーカー氏が亡くなられた。残念であるが、77歳ならば若くもなく、よかったのではないか。

 http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPJAPAN-13424820100120

 以前も書いたと思うけど、パーカー氏の作品のなかで私はスペンサー・シリーズの初期7作までしか読んでいない。『残酷な土地』までである。その理由は、情景描写が少なくなり、脳内で映像化できず、読み進むことができなくなってしまったからである。いや、それは正確ではない。何で読めないのだろうと訝しく思ったので、『失投』『レイチェル』を再読したら読めたのだから――しかも非常に楽しくである。両作品の情景描写の具合も較べたのだけど、あまり変化はなかった。このように突然読めなくなった作家は、それ以前も以降もパーカー氏しかいない。誰か他の人に、そういうことはないのかなと、今でも不思議に思っている。

 当時、北上次郎氏の『ミステリマガジン』で連載していた「ヒーロー論」を愛読していた。そのなかにスペンサー・シリーズについて、スペンサーとスーザンの関係を軸に分析していた回があり、それを読んで、よくパーカーを読めるなあと感心したものである。

 実は、私はパーカー氏のサイン本を持っている。およそ20年ぐらい前に来日し、八重洲ブックスセンターでサイン会を行ったときのものだ。当時は、『初秋』まで読んでいたのだが、サインをもらいたいと思うほどのファンだったのだ。『真紅の歓び』に書かれたサインは――確か『本の雑誌』にも掲載されていたのだけど――「RBP」を流れるようにし、小さく落書きのように感じるもので、力が入っておらず、ちょっとがっかりしたのを覚えている。まあ、それほどサインを省略化しなければならないほど、数多くのサインを求められるのだろうと思う。

 その後パーカー氏のことは忘れることはなく書評など追いかけていた。しかし、「ファンには愉しめる」という書評では、食指が伸びることはなかった。だけど、アメリカではハードボイルド・スクールで巨匠扱いされていると、おそらく『ミステリマガジン』で読んで、アメリカ人は飽きないのか、それとも、原著にはそれほどの魅力があるのかと、もう一度読んで確かめてみようかなと思い直し、最近古本を文庫で購入した。

 そんな中で私のパーカー氏のベストは『失投』である。ストーリーは忘れてしまったけれど、ハードボイルド小説の割には展開がスピーディで飽きさせなかった。それを野球の世界を舞台にしたところが魅力的だった。ほかに野球を舞台にした優れた作品はなかったしね。

 そういえば、ちょっと前に仕事で知り合った女の人で、原著でスペンサー・シリーズを読んでいるという人がいた。「今でも面白いの?」と聞いたら、彼女は「面白いですよ」と答えたのを思い出した。