ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『狂人の部屋』ポール・アルテ,平岡敦訳,早川書房,1990→2007

 時は1930年代。ハリス・ソーンは、あかずの間と呼ばれる部屋を開放した。その部屋は、100年前にハリスの大叔父のハーヴィーが身もだえして死んだ部屋だった。ハーヴィーは、昼夜こもりきりで原稿を執筆し、その原稿は狂人が書いた予言めいた物語と呼ばれ家族によって封印されたのである。ハーヴィーは身もだえしながら死に、さらに家族の何人かが火事で死んだため、呪われた部屋としてあかずの間としたのだった。開かずの間を解放した後、ハリス・ソーンは窓から転落死したのである…。

 訳者によるとアルテの最高傑作とのことだけど僕にはそう思えなかった。僕自身の体調があまりよくなかったせいで、数名のメインの登場人物が出てくるけど、作者の視点があちこちに飛んでしまっていて、誰が誰だか区分けするのが難しかったのだ。それにしても、このような偶発的な要素が強い物語はアンフェアな感じがした――そう思ってしまったから作者に敗北したことは、プロローグからはっきりしてしていることだけど。なぜならば、このトリックこそが作者の思惑だったのだから。でもこのようなトリックならば、泡坂妻夫の有名作の方がよくできていると思う。☆☆☆というところ。