ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『盲目の理髪師』ディクスン・カー, 井上一夫訳,創元推理文庫,1934→1962

 ギデオン・フェル博士が探偵役のシリーズ23作中4作目の初期作。私が読んだのは1997年32版のものですが、とにかく字が小さくて読むのが大変でした。読んでも読んでも先へ進まない感じ。ストーリーそのものも何の話をしているのか焦点があっていない感じがして疲れました。

 ウィキペディアをみると、本作は以下のように紹介されているほど有名なんですかね。初期作だから「後期のH・M物」ではありませんよね。

『盲目の理髪師』『連続殺人事件』、後期のH・M物はドタバタ喜劇(ファース)が繰り広げられる横で事件が進行する。P・Gウッドハウスの変名ではという憶測も飛んだ。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BCより)

 うーん、P・Gウッドハウス、懐かしい。『ミステリマガジン』の浅倉久志さん(亡くなられたこと、残念です)の訳で「バック・トゥ・ユーモア・スケッチ」(というようなタイトル)でよく読んでましたね。内容はまったく覚えていませんが……。

 本作はウィキペディアで紹介されていたように、登場人物が真面目なんだか不真面目なんだか、吉本新喜劇のように盗難や殺人が起こっても、「さあ、それは心配だ」という程度であまり深刻に受け止めないので、起こったことそのものに印象が残らず読み流してしまいました。……私はファースが向いていない典型的な日本人なんですね。

 作家のモーガンがギディオン・フェル博士に奇妙な話があるんですよと自らの船旅について語るところから始まる。大西洋をイギリスに向かう定期船クィーン・ヴィクトリア号の船上で、外交官で舟客のウォーレンが伯父の政治家のふざけて行った演説が収録されたフィルムを持っていたのだが、それが盗まれたところから始まる。またエメラルドの宝石が盗まれる。犯人を捜していると今度は殺人事件が起きるのだが死体が消えてしまった……。

 トリックも面白いんですけど、ファルス的要素と謎解き的要素がこんがらがっていて、推理に集中できず退屈な時間を過ごしてしまいました……。また船上とはいえ、大きな定期船ですから、疑わしい人物が少ないことに根本的に理解できませんでした。