ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『トーキョー・プリズン』柳広司,角川文庫,2006→2009

 舞台は第二次世界大戦後の日本。ニュージーランド人の私立探偵エドワード・フェアヒールドが、スガモプリズンで起こった密室の殺人事件を捜査する物語。といっても、収監されている戦犯でかつ記憶喪失のキジマという男が推理するのだけど。また、キジマの戦時中の行いは戦犯に値するものだったのか、信じることができないキジマの友人と元婚約者の証言によって揺さぶられたエドワードは、だんだんそれも調査していく……。

 収監されている人間が推理役を行うという、『羊たちの沈黙』パターンの設定。それを日本人が設定されているのに初めは違和感をもったものの、物語が推移して来るに連れて、キジマの行動の不気味さにそれは消えていきます。謎は複数提示されており、ストーリー展開はスピーディであるものの、こういったら申し訳ないのですが、一つひとつのエピソードが軽く感じました。最後のどんでん返しにしても、読者に対しフェアな伏線をはっていないにもかかわらず、何となく予想がついていたと思わせます。それは、やはり中途のエピソードに徹底さがないからではないでしょうか。☆☆☆というところです。

トーキョー・プリズン (角川文庫)

トーキョー・プリズン (角川文庫)