ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『銀河英雄伝説〈5〉風雲篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

 フェザーン自治領を武力占領した帝国軍の最高司令官ラインハルトは、すべての宇宙を手中におさめようと、同盟軍への侵攻を開始し、まずフェザーン回廊を通過しイゼルローン要塞に向かった。首都はイゼルローン要塞にいるヤンに対し、ヤンの判断で行動して良いと連絡を受け、ヤンはイゼルローン要塞をあっさりと放棄した。ヤンは反対する部下に対し、「今回、たったひとつ、逆転のトライを決める機会がある」と述べるのだが。
 首都に戻るとヤン・ウェンリーは元帥に昇進し、今度は帝国軍艦隊に軍事攻撃を始めるよう指示を受けた。まず数々の勝利をおさめ、ローエングラムとの正面対決をすることを計画した。それに対し、ラインハルトは直属の艦隊のみでヤンの攻撃に対処するために囮となって罠を嵌めようとする。ヤンはそのラインハルトの誘いに気づきつつも戦うことを選ぶ。 
 いよいよ二国間の全面戦争とも言える、バーミリオン星域会戦が始まった。軍事量的にはほぼ互角、あるいは同盟軍が不利ではない程度だった。二人が正面から戦った。
 同盟軍は帝国軍に対し零距離射撃で第三陣から、八、九陣と前進する。帝国軍は極端な縦深陣で同盟軍の消耗を図った。しかし、ヤンによる同盟軍の別働隊の囮作戦に対し帝国軍はことごとく破れていく。ラインハルト自身も危険に陥いり、ヤンに危機一髪のところまで追いつめられる。
 しかし、同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニストが無条件停戦を命令したのだ――。ヤンに会ったラインハルトは、ヤンに対し元帥の地位を与えるとしたが、ヤンは拒否をした。帝国軍に有利な条件でバーラトの和約が成立したのだった。そして、ラインハルトは女帝に退位を促しゴールデンバウム朝は終焉した。新皇帝ラインハルトの誕生である。

 二人の軍事的天才をどのように描写するか、それが問題です。本巻では、戦術的にはヤンが勝り、政治的にはラインハルトが勝るという選択がなされました。それにしてもそこに至るまでの描写が細かい。

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)