ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『相棒 Season 8』「第16話 隠されていた顔」

 ある日曜日、大学の農学部の倉庫でガス爆発事件が起き、心理学部の曽田准教授の焼死体が見つかった。その爆発の原因は、曽田が倉庫で煙草を吸ったとき、LPガスのボンベから漏れたガスに引火したものだった。その事件のそばを偶然通りかかっていた右京と神戸は、捜査を始める。その倉庫は農学部の学生が喫煙室代わりに利用していたものであり、前日の夕方に喫煙した者がおり、その時はガス漏れが全くなかったことから、ボンベを人為的に開けた者がいるのではないか、と疑いをもつ。
 曽田の部屋にはたくさんのレンタカーの領収書、望遠レンズがあり、彼は誰かを監視していたのではないか、その誰かとは同じ准教授で教授候補の小笠原ではないかと疑惑をもつ。しかし曽田の望遠レンズ付きの一眼レフカメラには、同学部の鶴見教授と室井助教が付き合っている写真が映っていた。その室井によると、学生の岡本と小笠原が付き合っているとのことだった。
 右京と神戸は、岡本のことを調査すると、倉庫で煙草を吸いたくなるビデオを作成し、サブリミナル効果を用いて、曽田を殺したと推理する。その件で岡本を追い込むと、岡本は曽田を殺したと自供した――。しかし、サブリミナル効果による殺人では証拠とはいえない。その証拠をどのように掴むか、再び倉庫に向い、農薬が床にこぼれていたのを発見する右京。犯人は他にいるのではないか?

 一種の殺人教唆もので完全犯罪といってもよいでしょう。この犯行計画は魅力的ではあるけれど、探偵は推理によって犯人を言い当てても、犯人のミスがなければ逮捕できないというジレンマをもちます。この犯人のミスをどのように自然に視聴者に提供するのかが、作者としては腕の見せ所ですが、本作では偶然を使用しており、しかもそれを犯人がとぼければ逃げきれることができるにもかかわらず、犯人は自供をしてしまうのです。逮捕にならないとストーリーを終わることができないとはいえ、安易だったのではないかと思います。テンポなどはよかったので、☆☆☆★というところ。もう一度みたいと思ったら☆☆☆☆以上としていますが、それに満ちません。