マイケル・バー=ゾウハーの第4作目。私は過去に1作は読んでいるはずなのですが、作品名もわからず……。とびきり面白かったという記憶しか残っていません。本書は、書体を大きくした復刊もの、あるいは改訳ものなのでしょうか?
ある二重スパイ「パンドラ」の正体が書かれているといわれる文書が、偶然ある大学院生が大英図書館で見つけた。その文書を手に入れるためKGBは殺人をいとわない追跡を始める。一方、CIAもそれに対抗するためにスパイを派遣した。いったい、その文書には何が書かれているのか?
うーん、面白い。エピソードが数珠繋ぎみたいな小説でした。ひとつの問題や事件が起き、それが解決され処理されると、新たな謎や問題、事件が起こる。そしてまた、解決され処理されて、新たなことが起こる。これは、なかなかできないことなんですよねえ。謎や問題を提示すると、それが解決されないまま、次のシーンに移ってしまう作品が多いのですが、これは読者にとって未消化ものとして残ってしまい、次のエピソードに移るのが煩わしくなってしまうのです。それが、本作品ではうまくストーリーとして消化されて繋がっているから、次々に先を読まされてしまいます。
そして、オドロキのラストシーン。ちょっと、その設定には無理があるんじゃない、なんて思ってしまいましたが、冷戦下のCIAとKGBは本当に訳のわからない、袋小路に陥っているような情報戦をしていたようですからね。やはり傑作ということで、☆☆☆☆★です。
- 作者: マイケルバー=ゾウハー,Michael Bar‐Zohar,広瀬順弘
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
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