hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

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『おかしな二人』井上夢人,講談社,1993→1996――何度でも読むことができる傑作

 気分が落ち込んで、鬱っぽくなり、エネルギーを要することが自発的にできなくなったときに読む本がいくつかある。その多くは、例えば『まんが道』『プレイボール』などのマンガであったけど、今回は既読の本棚に並んでいた本書を手にとった。本書は、井上氏による「岡嶋二人物語」であり、ミステリ作家の自叙伝であり、一種のノウハウ本であり、青春物語であり、そして何度も読むことができる☆☆☆☆☆の傑作である。

 解説の大沢氏と同様に、私は雑誌(『メフィスト』だったのだろうか? 当時の講談社の日本ミステリ専門誌だった)初出時に読んでおり、それもちょうど就職活動期で落ち込んでいたときで、忙しい時期だったにもかかわらず、あまりの面白さに一気読みしてしまったものである。だから、読むたびに、あのシュウカツの空気を思い出す。

 まず前半は「盛衰記」の「盛」で、二人の出会いから『焦茶色のパステル』による江戸川乱歩賞受賞までのお話。4回の江戸川乱歩賞の応募作がアイデアからストーリーまで、どのようにできあがってきたか、詳細に記されています。

 そして、執筆における二人の分担関係。アイデアを出し合っていき、それをころがして、作品にまで仕上げる方法が具体的に書かれています。

 たとえば、推理作家がよくやるのはあるものと〈犯罪〉の組み合わせだ。ポテトチップスと犯罪を組み合わせる。蜂蜜と犯罪を組み合わせる。雨だれと犯罪。下着と犯罪。下着と犯罪。アインシュタインと犯罪――頭の中で並べ、置き換え、重ね合わせ、グチャグチャに混ぜ合わせる。そんな遊びにも似たことを繰り返しているうちに、ふいに、なにかが見えることがある。
 僕たちにとっての雑談は、そういう遊びの手段だった。(350〜351頁より)

 上記はそのプロセスのなかの「発想」であり、その後、「転がし」→「さらに転がし」→「もっと転がし」→「穴埋め」→「裏ライン」→「箱書」→「執筆」というように作品のひとつを題材オープンにしています。

 後半は「衰」で、乱歩賞受賞から解散までのお話。これも、すべてではないですが、二人の関係の変化とともに、『チョコレートゲーム』『99%の誘拐』『クラインの壺』などについて記されています。私などは、岡嶋作品は後半になればなるほど、面白い作品になっていると感じていましたので、その逆をいく人間関係と作者の不安定な精神状態に驚かされました。

おかしな二人 (講談社文庫)

おかしな二人 (講談社文庫)