ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『殴られたブロンド』E・S・ガードナー, 砧一郎訳,早川書房,1944→1988

 弁護士ペリイ・メイスン・シリーズ全82作中25冊目の作品。

 カバーの紹介欄に「シリーズ中でも群を抜いて劇的な展開を見せる代表的傑作」と書かれているためか売れたようですね。ガードナーの作品は新刊書店には売っていないので、私はブックオフなどの古本屋で購入しているのですが、購入リストを所持していないので、積ん読しているうちに、写真のように間違えて2冊購入してしまいました。でも、本書は売れたからでしょうね。おそらくは、やたらべた褒めの紹介文のため。

 メイスン・シリーズのような長期シリーズは、初心者がどれから入っていくか迷うんですよね。しかも、メイスン・シリーズは、ポアロ・シリーズの『アクロイド殺し』やカーの『火刑法廷』のように、ミステリブックガイドなどでも代表作が紹介されていないため、どれを手にとって良いかわからない。手に入る情報はカバーのみですからね……。

 さて本書ですが、最後の最後まで犯人がまったくわかりませんでした。そういう意味では傑作かもしれませんね。メイスンもモースのように、少し妄想的な推理をしますし。というか、そうしなきゃ事件が解決できない。

 冒頭で、眼に青痣をつけたブロンド娘が雇い主の息子とデートしたときに殴られたとメイスンに訴えたなんて、おおDVか、ガードナーは先見の明があるなあと感心したのですが、脅迫、殺人、誘拐など次々に事件が起こります。最後はメイスン自身が犯人として疑われる事態になるのです。というわけですが、無理な推理をするところが少し減点対象で☆☆☆★です。

殴られたブロンド (ハヤカワ・ミステリ文庫―ペリイ・メイスン・シリーズ)

殴られたブロンド (ハヤカワ・ミステリ文庫―ペリイ・メイスン・シリーズ)

 以下は、原著のペーパーバックですかねえ? こちらも眼にアザをつけたブロンド女性ですな。

CASE BLACK EYED BLONDE

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