ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

たまには仕事のことなど

 先月末から今月初旬にかけて、半年ぶりに書籍3タイトルを編集・発行しました。私の場合、どの書籍でも発行するまでは、編集作業をしながら「これは売れるかも」「これは売れないかも」と自信と不安がゆらゆら揺れまくりなのですが、そのなかの2タイトルは、結構自信作だったのです。というのは、その業界を研究して、この分野にはこういう内容のものがないから、こういう内容のものをきちんと提供すれば売れるという計算をしていたからです。そして、まさにその書籍がパターン配本で書店に流通して一週間ぐらいの間、営業サイドから「書店で動いているようだよ」と端々に聞いていたんですね。そうしたら、先日、紀伊國屋書店の週間の販売データを受け取ったら、予想以上に売れている。まったく宣伝していないのにもかかわらず、書店で手にとった人が購入してくれているらしい。思わず八神月ふうに「計算通り」と心の中で呟いてしまいました。こんなに手応えがあるのは一年半ぶりぐらい。これはロングで売れるなあ。めちゃめちゃ嬉しい。でも他の2タイトルは、そこそこ損をしない程度の売上げだろうなあ。


 ロングで売れているといえば、『本の雑誌 2010年3月号』の永江朗氏の「プロジェクト・キャプテン奮戦記」という記事の『キャプテン』の完全版刊行物語で以下のような記述があり。うーん、DVDの世界にもじわじわ売れていて評価される作品があるんだと感心しました。

 関係者は「地味だけどじわじわ売れているDVDがある。それが『キャプテン』だ」と滝沢に告げた。そこから『キャプテン』のスピンアウト作品である『プレイボール』のアニメ化、そして『キャプテン』の実写版映画へと話がつながっていった。今回の『キャプテン』完全版はその延長線上にある。(73頁より)


 上記のようなことを書きながらですが、あの、たぬきちさんの「リストラなう」のブログは面白いですねえ。勉強になります。最初はスリリングなリストラ日記のようでしたが、会社の体制もしくは業界批判に展開するに及んで、うまく書籍化すれば、城繁幸氏の『内側から見た富士通成果主義」の崩壊』(これは城氏の最高傑作だと思うんです)のようになるのではないかと期待しています。書籍の体裁も同じようにペーパバック風にしてもいいんじゃないでしょうか。これをたぬきち氏の出版社が発行すれば、これこそがジャーナリズムですよね。

 と、私は傍観者の立ち位置なのは、たぬきち氏の出版社が総合出版社であり、私のところは専門書出版社であるため。給料がまったく違うし。給料分の利益を得るには、一冊あたりの書籍の損益分岐点の部数がどれくらいなんでしょうか? まったく羨ましいものです。