ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

紐と十字架』イアン・ランキン, 延原泰子訳,早川書房,1987→2005

 リーバス警部シリーズの第1作目の作品。ランキンは注目していたものの、初期に翻訳されたものはページ数が非常に多く、また評価が微妙によろしくないことから手にとりませんでした。しかし、私自身がイギリスミステリに相性がよくなってきているのではと感じたことと、初期作も文庫化されるに及んで、第1作目から順序よく読んでみようと決めた次第。

 エジンバラのグレイト・ロンドン・ロード署の管轄内で、少女連続誘拐殺人事件が起こった。事件に関連性が見いだせず捜査が侵攻しない中、部長刑事ジョン・リーバスは選任で捜査にあたるよう命令された。迷走しているうちに、第3・4の殺人事件が起こる。やがてリーバスの元へ殺人事件と関与していると思われる差出人不明の手紙が送られてきた。それを分析しているうちに、犯人の目的はリーバスではないかと思われたが、リーバス自身には身に覚えがない。一体誰が犯人なのか?

 作者自身がミステリではなく普通小説としていたように、謎解き色は強くありません、というよりも全くありません。捜査そのものも上手く進行するわけではなく、リーバスが優れた刑事だとは思えません。しかし、リーバスは行動にうまく矛盾を抱え込んでおり(これがうまく描写されていないと単なる訳が分からないキャラになってしまうのですが)、それが人間くささを感じさせてくれます。イギリスによくみられる警察小説+ハードボイルド小説のようになっており、スピーディで読みやすいです。決して悪くないという意味で☆☆☆★です。

紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)

紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)

 以下は原著の1つ。何度か出版されているようです。

Knots and Crosses (Inspector Rebus)

Knots and Crosses (Inspector Rebus)