ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『泥棒は詩を口ずさむ』ローレンス・ブロック, 田口俊樹,早川書房,1979→1994

 泥棒バーニイ・シリーズ ・シリーズ全10作中3作目の作品。第1回ネロ・ウルフ賞(1979)とのこと。原著のアマゾンをみましたら、結構評価されておりました。まあ、アマゾンの評価はファンが書くものだから、あまり客観的な評価ではないけれど……。

 表向きはニューヨークの古書店〈バーネガット〉の店主で、本業は7つ道具を駆使する泥棒バーニイは、古書蒐集家のJ・ラドヤード・ウェルキンは、キプリング自費出版した世界でたった一冊の詩集『バックロウ砦の解放』を購入した貿易商のジェス・アークライドから盗んできて欲しいと15000ドルで依頼した。バーニイはうまくやりおおせた。その後店にシーク教徒と思われる男に500ドルで強盗されたが、バーニイは他の本を渡して切り抜ける。そして『バックロウ砦の解放』を渡すために、ウェルキンの指定する建物に行ったところ、30代前半の女が迎えて待っていたが、コーヒーに仕込まれた睡眠薬のために眠りこけてしまう。目が覚めると、その女が射殺されており、バーニイの手には拳銃が握られ、本がなくなっていた。ウェルキンがバーニイをはめたのか? いったい何故? バーニイは自分の無実をはらすべく警察の捜査が始まる前に行動を始めるのだが……。

 『マルタの鷹』以来の、希少本をめぐる宝探しの物語。いつものごとく、バーニイは物事を深刻に語ることがなく、大したことではないかのように進んで心地よい。しかし、謎そのものが、不可思議性はあるものの起こっていることは平凡であり、解決にもひねりがあるようで、ないようで、という感じで、イマイチ不完全燃焼ぎみ。☆☆☆というところ。

泥棒は詩を口ずさむ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

泥棒は詩を口ずさむ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ハヤカワ文庫のカバーが表示されないので、原著ブックデザインを見てみる。バーニイ・シリーズは同じブックデザインで統一されておりました。

Burglar Who Liked to Quote Kipling, The (Bernie Rhodenbarr)

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