ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『謎まで三マイル』コリン・デクスター, 大庭忠男,早川書房,1983→1993

 モース主任警部シリーズ第6作めの作品。ちなみにタイトルの意味はよく分かりません。おそらくは出典があるのではないかと思いますが。

 河から上がった死体は四肢どころか首まで切断されていた。死体がもっていた業の半分しか読むことができない手紙から、殺されたのは行方不明の大学教授と捜査を始めた。しかし、その大学教授から私を捜さないでくれという手紙が来る。いったい死体は誰なのか?

 毎日少しずつ読んでいたので、最後に至ってもストーリーはちんぷんかんぷん。で、もう一度簡単にストーリーのアウトラインを追っていくと、ようやく、ああ、なるほどと分かる次第。

 捜査を行ううちに、さらに死体が次々と発見されて、えっ、一体どういうこと、と頭の中にクエスチョンマークが渦巻いてしまいます。ストーリー展開も文字面としては意味が分かるのですが、あまりにも都合の良い展開とあっさりした描写のために、一読だけでは意味がつかめず再読が必要になります。トリックそのものは、複雑そうに見えて、分かってしまえば極めてシンプル。なのですが、それはモース警部が推理として説明するだけで証明しないので、いまいち釈然としませんでした。それでも、そのシンプルさに惹かれて、☆☆☆★です。

 前回の『ジェリコ街の女』でも記しましたが、コリン・デクスターは本書でも「読者vs探偵」ではなく「読者vs作者」というミステリ観に基づいて書かれていて、どうしても違和感をもってしまいます。それは作者のせいではなく、私のミステリ観が歪んでいるということなのでしょう。でも、同意する人は結構いるんじゃないのかな?

謎まで三マイル (ハヤカワ・ミステリ文庫)

謎まで三マイル (ハヤカワ・ミステリ文庫)