ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『血の痕跡』スティーヴン・グリーンリーフ, 黒原敏行訳,早川書房,1992→1994

 私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第8作目の作品。前作が、謎解きが凝っていて評価が高かった『匿名原稿』。本書も読み終えてみると、ハードボイルド小説というよりも私立探偵小説の要素と謎解きミステリの要素が上手く複合しており、なかなかのお勧めです。

 原著タイトルは、『BLOOD TYPE』ということは、血液型という意味だけど、内容を読むともっと複合的な意味を含んでいることが分かります。

 タナーの友人で、救急車の運転の仕事をしているトム・クランドールが歓楽街で自殺で発見された。トムの性格から、またタナーのトムからの留守電メッセージから、タナーはトムが自殺したとは考えられなかった。そこで捜査に乗り出した。トムが残したものを分析し、トムの妻、妻の浮気相手、トムの幼なじみ、トムの両親などに丁寧に聞き込みを行った。すると、トムには厄介者の弟がいた。その弟がキーパーソンであると探してみるのだが……。

 物語に良い意味での平易さがあり、リーダビリティも高く、会話の運びが自然で、それでいてエンディングはまさしく謎解きミステリ+ハードボイルドとなっています。おまけに当時の世相もかいま見せ、こんな時代だったのだと思い出すこともできる。読んで損はないと言う意味で、☆☆☆☆です。早川が文庫化するわけです。

血の痕跡 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)―私立探偵ジョン・タナー)

血の痕跡 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)―私立探偵ジョン・タナー)

 ポケミスのカバーが表記されないので、原著カバーの紹介。

BLOOD TYPE

BLOOD TYPE