ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『失踪者』折原一,文藝春秋,1998→2001

 折原一氏は本当に久しぶり。『冤罪者』以来です。本作もとても10年以上前の作品とは思えないぐらい古びていません。折原作品は次々と復刊されるでしょうね。けど、本作は長かったので、それがちょっと辛かったですね……。

 埼玉県の久喜市で起きた二人のOLと短大生の連続失踪事件。それを調査するノンフィクション作家の高峯は15年前の中学生、OL、主婦の連続失踪事件とからめていくのだが……。

 ノンフィクション作家、その弟子の女性、少年Aの父親、「ユダ」と称する犯人などさまざまな視点から、現在と過去が語られたり、時系列もつながっているようにも、つながっていないようにもなっているので、事件が同時進行していくうちに、いま語られているのが何の事件についてなのか、不安に陥ります。こういう読み方は邪道なのでしょうが……。複数の実際に起きた事件やニュースなどを組み合わせているため、これはあの事件をモデルにしてるなと感じることが多いです。エンディングも意外性がありますが、少し長すぎるということで☆☆☆★です。

失踪者 (文春文庫)

失踪者 (文春文庫)