ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『杉の柩』アガサ・クリスティー, 恩地三保子訳,早川書房,1940→1976

 クリスティ中期の作品。エレノアという女性が裁判で有罪を追求されているプロローグではじまり、それから裁判までに至る物語が始まる。金持ちの未亡人で寝たきりのローラの姪エレノアが、その義理の甥ロディーと恋に落ちて婚約まで至りそうだった。しかしロディーは門番の娘のメアリイと恋に落ちることを感ずる。ローラが急逝した。ローラは遺言書を残しておらず、ローラの財産はエレノアに渡る。そんなときメアリイは毒殺されてしまった。エレノアは逮捕されてしまう。エレノアの無罪を信じるローラの主治医はポアロに事件の解決を依頼する。

 非常にシンプルなトリックなのですが、うまく融合されています。改めてもう一度読むと、至る所に伏線が張られておりました。また、裁判ということもあって、ペリイ・メイスンと比べても面白く読むことができます。シンプルな読みやすい文体・翻訳、適度な長さなど加味して、☆☆☆★というところです。現代では成り立たないと言っても、伏線がきちんと張られていれば、それはリアリティに転ずるのだと教えられますね。