ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉,小学館,2010

 書店の店頭で、帯の「47万部突破!」に惹かれて購入しました。東川氏の作品ははじめて。大企業の令嬢で刑事の宝生麗子お嬢様が捜査を行い、その執事の影山という若い男が推理をするというパターンの6本の連作短編ミステリ。トリックそのものはオリジナリティがあるとか、難解であるとかは全くなく、本当に大したことがないのですが、お嬢様刑事と執事の掛け合いが非常に楽しい。執事が推理を披露するところは、黒後家蜘蛛の会とか、「黒執事」とか思いだし、掛け合い漫才のようなところは赤川次郎氏や森見登美彦氏の作品群を思い出させます。本格的なミステリとよりも、ライトノベルといってもよいでしょう。文章のテンポが非常によくて読みやすいです。

 でもまあこのようなミステリがベストセラーになるんですねえ。良いことです。これが世間の流れがミステリに流れつつあるのか、それとも森見登美彦氏などのウェルメイドな作品群からの流れなのか分かりませんが。あ、あと、本日本屋大賞を受賞されたのこと。おめでとうございます。

謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで