やはり本書は、人間を描くミステリというよりも、あくまでも変格謎解きミステリだと思う。いや、この頃では変格というよりも王道かもしれない。なぜならば、読者をどのようにしてびっくりさせるかを目的にしているミステリだからだ。だから評価できる。
新宿にある盗聴専門の探偵が主人公で、ある楽器会社からライバル会社にデザインが流用されているので、それを調査して欲しいという依頼があり、探偵はライバル会社に入社し、その証拠を探る始めて1ヶ月後から物語は始まる。女探偵をスカウトして、夜中に盗聴をしていくのだが、社内で殺人事件が起こる。
軽口をたたく主人公はいかにも軽ハードボイルドで、軽妙な描写から、すぐに思い出したのは都筑道夫の西連寺剛シリーズである。おそらく西蓮寺シリーズに対するオマージュなのではないか。そして、それは成功している。☆☆☆★というところであるが、分量・リーダビリティともに申し分なく、すばらしい作品だと思う。
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06/27
- メディア: 文庫
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