ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『涼宮ハルヒの分裂』谷川流, いとうのいぢ,角川書店,2007/『涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き)』谷川流, いとうのいぢ,角川書店,2011

 涼宮ハルヒシリーズ最新作。『分裂』の発行が2007年、そして続編の『驚愕』が2011年と4年後にようやく発行されたものです。
 ハルヒ・シリーズは人気があるわりには、ドラマというか、なんと言ったらよいか、派手な展開やアクションが多くありません。ハルヒが神的存在という設定があり、ハルヒの精神的バランスが崩れると、それに連動して世界そのものも影響を受けてしまうので、ハルヒの精神的バランスを崩さないことを目的としてストーリーが展開していくからでしょう。
 例えてみれば、高いビルの間の綱渡りをしている状態で、綱が揺れたり、風が吹いたりしてバランスが崩れるのをハラハラしながら見ているようなものです。
 この『分裂』『驚愕』ですが、SOS団に対立する?新キャラクター3名が出てきます。しかし、その新キャラはとくにアクションを起こすわけではなく、主人子のキョンと話をしているだけなのです。
 正直言ってしまえば、途中までは非常に退屈でしたが、世界が分裂を起こし、時間軸の流れが二つになっていることを「α」シーン、「β」シーンと読者の前に隠すことなくさらけ出し、その謎解きの段階になってようやくハルヒシリーズらしくなってきます。このSF的な仕掛けは、藤子・F・不二雄のSF短編のようで、もしファンでしたら、大いに愉しめるでしょう。

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)