ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』スティーグ・ラーソン, ヘレンハルメ美穂, 岩澤雅利訳,早川書房,2005→2008

 話題のスウェーデン産ミステリ。陰謀+推理物で展開はオーソドックス、エンタメど真ん中の作品。発売当初の書評では自分には合わないとスルーしていたのですが、その後の評判の良さに、また一般での無視のされっぷりに、逆に興味をもちました(でも、それは現在の大概の海外ミステリや映画にいえることだけど)。最初の50頁ぐらいまでは退屈だったのですが、それを過ぎたらジェットコースターのようにラストまで一気に進みます。

 月刊のジャーナル新聞(?)『ミレニアム』の経営者兼編集長のミカエルは、大物の実業家の違法行為を訴えたが、その記事を名誉毀損で訴えられてしまい、裁判で負けてしまった。

 『ミレニアム』の延命を図るために、経営・編集から降りることを決意したミカエルであったが、そのもとに、大企業グループの前会長から、40年前に失踪した兄の孫娘の調査を依頼してきた。その孫娘は、一族が住む孤島で失踪したという。それを成功させれば、法外な報酬とともに、違法行為の実業家を訴える記事ができるネタを提供するという。ミカエルは、その失踪事件の捜査を引き受けたのだが……。

 ストーリーは、このミカエルのことを調査していたフリーの天才型調査員のリスベットとミカエルがコンビを組んで、膨大な資料を検証して、矛盾点を見つけ出し、関係者に会って、その裏付けをとるという捜査を開始していきます。これが非常に映像的で、まるで映画を見ているかのようでした。

 主人公の中年男性は、正義感が強いジャーナリストであり、女性にモテモテの中年男性という設定は、嫌みはないので、すんなり進むことができます。むしろ、相棒のリスベットに嫌みを感じかもしれません。私としては、そのリスベットをすんなり受け入れたミカエルに違和感を感じましたが。

 あまりにも王道なのですが、それがうまく大成功しているところを含んで、☆☆☆★というところです。まあ、へそ曲がりな私向きではなかったということです……。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上