サブタイトルにあるとおり妖怪研究の鳥羽口になった論文集。さまざまな文献とフィールドワークから表面的な物事の裏に何が現象として生じているかがきわめて論理的に述べられており、まるでそれは名探偵が推理を披露するかごときのものです。かつ新しい分野が少しずつ切り広げられている過程をスリリングさとして味わえます。論文なので読み口は重たいのですが、非常に面白い内容です。
と同時に、さまざまなマンガ、アニメなどの元ネタになっているところにニヤニヤしてしまいました。私は、本書を小松先生の書籍だから手に取ったに過ぎないのですが、サブカル好きの人が非常に愉しめるのではないでしょうか。
キーワードは「憑きもの」「聖痕(スティグマ)」「呪咀」「妖術」「邪術」「因縁調伏」「生霊憑き」「犬神憑き」「式神」「いざなぎ流陰陽道」「古代陰陽道」「呪禁道」「呪い」「護法」「物怪」「憑坐」「山姥」「付喪神」など。
日本人が、どのように世界をとらえていたのかが、現在と異なることが分かります。この「憑きもの」という考え方は、人と人との精神やこころ、または意識といったらよいのでしょうか、そういうものに明確な垣根がなく、全体として共有していたからではないかと考えました。これは、以前、http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20090302で紹介した、『現代人が想定するような「意識」や「主観」「精神の活動」「意思」「心の空間」、統合的自我がなかった」こと』に通じるものでしょう。
- 作者: 小松和彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1994/03/04
- メディア: 文庫
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