ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『封印再度』森博嗣、講談社、1997

 S&Mシリーズ第5作めの作品。岐阜県の旧家の高齢の画家が蔵の中で血まみれで死んでいた。殺人とも思われるが、蔵が密室であったことから自殺にも考えられた。その高齢画家の娘と友人であった西之園萌絵は事件に興味をもつ。昔、その高齢画家の父親も同じように蔵の中で死んでいたというのだ……。その曾祖父の死の現場に、壺の形状をした「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣(はこ)」が残されていた。「匣」には鍵がかけられており、その鍵は「瓢」の中にあり、「瓢」の口は小さく取り出すことができなかった。いったい「匣」には何が入っているのか? 萌絵は犀川に相談をもちかけるのだが……。

 端正な謎解きミステリであり、謎の不可解性、その展開、合理的な解決に至り、そのようなミステリが好きな人にとっては、満足できる作品です。それは森氏のミステリの共通する長所であります。したがって、その謎のインパクトと論理性の素晴らしさが評価軸になるのですが、最初に明かされたときは、それはないだろう、と呟いてしまいました。同じようなトリックは名作にあるのです。そして、「瓢」と「匣」について、もう少し伏線が欲しかったと感じました。それでも、エンタテイメント性としては、☆☆☆★というところです。

封印再度 (講談社ノベルス)

封印再度 (講談社ノベルス)