本作は伊坂氏の四作目の作品にして出世作。それまでマニア筋に注目を浴びてはいたものの、ミステリファンにまでは浸透していませんでしたが、本作でミステリファンに認知されました。さらに編集担当者がつけたと思われる印象的なオビにより、一般の人々にまで手にとってもらうようになった作品。私はそれらのことを知ってはいたものの、ずーっと何故か手に取っていませんでした。
伊坂氏の作品のなかで今までに『オーデュボンの祈り』(先日読んで感想を記した)、『陽気なギャングが地球を回す』『アヒルと鴨のコインロッカー』『死神の精度』『魔王』『ゴールデンスランバー』(これも感想を書いた気がする)を読んでいます。これまでの最も好きなのは、トリックが印象的な『アヒル』と『オーデュポン』。でも、私は伊坂氏と相性がよくないようで、どうも積極的に評価することができません。好みじゃないけど気になる作家という位置づけです。
本書を読んでいくと思い出されるのがチャンドラー。ジグゾーパズルのように一つ一つのエピソードを配置し積み上げていって、それが全体のストーリーになっているところが似ています。そのエピソードのコラムとしての完成度が高く、それが人気の理由なのでしょうか。けれど話が進むにつれて、うざく感じてしまいました。それが好きな人は相性が合う人なのでしょう。で、私は合わなかったということで、☆☆☆というところです。
「泉水」という青年には、「春」という名前の弟がいた。彼ら兄弟の父親は異なり、弟の春は母親がレイプされて妊娠し生まれてきた子どもであった。ある日、泉水の勤めている遺伝子情報を扱う会社が放火にあり、それを春は泉水に予告していた。泉水は春にその理由を聞いてみると、仙台の街に起きている連続放火事件に一定のルールがあり、その現場近くにはグラフィティアート、つまり落書きが残されているという。それを消している内にそのルールに気がついたというのだ。その残された言葉を並べると「God can talk Ants goto America 280 century」だった。春はその謎を解いてみようというのだが……。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/28
- メディア: 文庫
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