ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『看守眼』横山秀夫、新潮社、2004→2009

 横山氏のバラエティ短編集。「看守眼」「自伝」「口癖」「午前五時の侵入者」「静かな家」「秘書課の男」の6編。それぞれ読ませてくれます。とくに、小市民的というか、他人には大した苦悩ではないのですが、本人にとっては大変な苦悩を体感させてくれます。
 「看守眼」は、警察署内の広報誌の編集している女性が、看守をしている男がある容疑者を追っていることに興味をもって……。どんでん返しが2回あります。「午前五時の侵入者」でも同様ですが、希望する職種につけなかった人がもつ複雑な感情がよいです。「自伝」はフリーの編集者・ライター3名が会社を立ち上げ、彼らのもとに大物実業家から自伝作成の依頼が来たが、実業家には不振なところがあった……。「口癖」は家裁の調停委員をしている女の新しい離婚調停の夫婦には、昔見覚えがあった……。「午前五時の侵入者」は、S県警察の情報管理課で、県警のホームページを立ち上げた男が、ある日管理していると、ハッキングされていることがわかった。男はしぶとく犯人を追い詰めるのだが……。「静かな家」は、地方新聞の整理部に属している男は、新しい記事ができたため、先送りできる記事と差し替えたが、先送りした記事の期限が切れていることがわかった……。「秘書課の男」は、県の知事公室秘書課長にまで上り詰めた男は、近頃県知事に嫌われているのではないかと感じた……。

看守眼 (新潮文庫)

看守眼 (新潮文庫)