ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『憎悪の化石』鮎川哲也,元推理文庫,1959→2002

 鮎川哲也の長編第5作目の作品。第13回日本探偵作家クラブ賞受賞作。端正な謎解きミステリです。

 熱海の旅館で外出せずに長逗留していた、湯田真壁という男が、その旅館の部屋で心臓を2回刺されて殺されたところを発見された。湯田の残していた鞄の中身から、手紙や8ミリフィルムなどから、恐喝をしていたことがわかる。警察はそれに関わる10名について丹念に捜査しアリバイを崩そうとするが、殺人が起こった時刻には、みなアリバイがあった……。

 冒頭の若い女性の自殺から、シーンごとにテキパキとシンプルにストーリーが進みます。一人の容疑者を当たり、その次にその関係者に当たるなど、丹念に捜査を解説していきます。そこに穴があるかどうかが著者と読者の対決になるのですが、私は正直ぼーっとやり過ごしてしまいました。トリックそのものは、アリバイ崩しがメインで、あるマニアであればわかるようになっています。私としては、脅迫者が脅迫された10名という複数の人々が容疑者になるという設定が興味深かったですね。殺人の動機をどのようなものにするかが難しいですから。☆☆☆というところです。

憎悪の化石 (創元推理文庫)

憎悪の化石 (創元推理文庫)

↓『りら荘事件』鮎川哲也講談社、1958→1992の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20080815