ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『出版大崩壊――電子書籍の罠』山田順、文藝春秋、2011

 オビの表4が「既存メディアの幻想を打ち砕く!」で編集担当者の趣味がわかりそうなのが楽しい。タイトル通り、これまでの出版システムが崩壊するであろうというもの。電子書籍も日本では厳しいのではという著者の考えで、うなずくところ多しです。音楽でも映像でもネットコンテンツになるとフリーになってしまうんですよね。おそらくデジタル7割、紙媒体3割ぐらいに(願望も含めて)落ち着くと思うのだけど、コスト的に出版社は続けていくことは難しくなるだろうなあ。とくに、一般を対象にした出版物は壊滅状態になるかもしれない。

 そこへこんなニュースが。

「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る
http://news.livedoor.com/article/detail/5977004/

 うーん。厳しいなあ。こんな話、うちの会社にもあったらしいのですが、まあ受けざるを得ないのでしょうね。

 そういえば、本書で参考になったのが、以下のところ。あまり電子出版には関係ないけど。「いったい読者はどのくらいいるか?」とあげて、今後の経済世界の動向についての場合、一流大学卒で一流企業社員、公官庁職員、弁護士、医者などの専門職の就業人口から出した実数最大で400万人とし、具体的にシミュレーションしている(実は、この400万人の出し方が面白いのですが)。

 さて、この年齢別人口のうちの上位20万人が、定年までの約40年間本を読むとする。すると40歳分だから、800万人になる。しかし、経済書となれば、読者はほとんど男性だから半分の400万人。これが想定読者数だ。とすれば1万部売るには、400人に1人に買ってもらわなければならない。私は、本を企画するときには、いつもこんな計算をしていた。

出版大崩壊 (文春新書)

出版大崩壊 (文春新書)