崩壊する地方の市民病院を舞台にしたエンタメ小説。主人公は、大学病院に勤務していたが、北海道の極北市民病院にとばされた非常勤外科医の今中医師。今中は、病院における事務長と病院長の対立、市と病院の対立など病院内のさまざまな出来事に遭遇し、翻弄されてしまう。
他の海堂氏の作品と同様、主人公の今中医師は奇妙な舞台の案内役かつ狂言回しであり、読者の替わりである。そのスタンスは強い意志を持って介入するものではないところがポイントです。
本書は、組織に属するものとしてのやり切れなさを強烈に感じてしまい、鬱になってしまいました。組織というものはうまく循環していれば、属する者はレールに乗っているかのように従って快適なものになりますが、腐っている組織にぶち当たりますと、普通の人は組織そのものをどうにか改善しようと思わず、しょうがないという諦めの境地に到り、そのなかでどのように生き延びていくかを考えます。それに対し、好意的に考えるか、否定的に考えるかが、本作を面白く感じるか左右されます。私は疲れてしまいましたが……。
エンディングも問題が解決せずに迎えてしまい、こういう問題はエンタメでも短期間には解決しないんだよ、という作者のメッセージなのでしょう。続きが出版されているのですが、どのようになっているのでしょうか? 解決されているのでしょうか?
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/03/20
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