ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『オックスフォード運河の殺人』コリン・デクスター, 大庭忠男訳, ハヤカワ・ミステリ文庫, 1989→1996

 モース警部主任シリーズ第8作目の作品で、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作。不摂生ため目眩がして倒れた(糖尿病なのか?)ため、病院に入院中のモースが一八〇〇年代の殺人事件を推理するという『時の娘』風の安楽椅子もの。

 入院中のモースは、暇に飽かせて、ルイスが差し入れてくれた昔の殺人事件を取り扱った専門研究書『オックスフォード運河の殺人』を読み始めた。それはオックスフォード運河の航行する快速平底船(フライ・ボート)(運河を行き来する24時間営業のバスのようなものか?)の乗り込んだ女性が運河で死体となって発見され、その犯人が乗組員だったという事件だった。その調書を読むと、さまざまな矛盾点が浮かび上がってくる。いったい真犯人は誰なのか?

 感想としては、ちょっとイマイチでした。トリックそのものは、ありふれたものですが、解き明かされるきっかけが日本人には厳しいかもしれません。というわけで☆☆☆です。文庫の解説は法月氏がされており本作品の内容に全く言及していないのですが、読者が本作品を読み終えると本作そのものが全編謎解きミステリであることがわかることで完結するという凝ったものでした。

オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)