卓越したサスペンスミステリ作家のパトリシア・ハイスミスの短編集。本書は、以下に示すように、おそらく代表作といえるほどのものは掲載されていないのですが、本書の解説をしている馬場啓一氏が指摘しているように、さまざまなシチュエーションとストーリー展開が凝らされており、読んでいる途中はうなされること請け合いです。短篇リストは以下のとおり。
「頭のなかで小説を書いた男」
「ネットワーク」
「池」
「一生背負っていくもの」
「風に吹かれて」
「またあの夜明けがやってくる」
「ウッドロウ・ウィルソンのネクタイ」
「島へ」
「奇妙な自殺」
「ベビー・スプーン」
「割れたガラス」
「木を撃たないで」
とくに、「ネットワーク」はテイストが藤子・F・不二雄のSF短篇に非常に似ており、この奇妙でありながら、ある一部の年配女性にありがちな心理の偏りは非常にビビッドで面白い。落ちも強烈でもなく、浅くもなく、後味の悪さがきちんと残るようなちょうど良さがあります。本書は☆☆☆☆とお勧めです。
- 作者: パトリシアハイスミス,Patricia Highsmith,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1992/12
- メディア: 文庫
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