ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『シティ・オブ・ボーンズ』マイクル・コナリー, 古沢嘉通訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2002→2005

 マイクル・コナリーの刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第8作目の作品。20年前という過去の殺人事件を捜査します。

 散歩中の犬が丘陵の森の奥から戻ってくると人骨を加えていた。その骨を検査してみると20年前の10歳の子どものものだった。ボッシュは丘の上で犬が掘り返したところから他の骨を見つける。その骨が44箇所の治癒段階にあることから子どもは非常に大きい虐待を受けていたこと、頭部に手術を受けていたことがわかる。それから、子どもの素性を調べていくのだが……。

 子どもの虐待というテーマです。本シリーズの特徴でもありますが、天才探偵の推理ではなく、科学的調査や聞き込みなどを元に、丹念に関係者を洗い出し、死体の身元、その犯人を地道に見つけ出します。

 最初から一貫してボッシュの三人称一視点で貫かれており、時系列が飛ぶことがなく、非常に読みやすくなっています。ここまで丹念ですと、最後にサプライズエンディングを迎えるのが難しいのではないかと心配してしまうほどですが、うまくそれをやり遂げています。

 また、捜査を追いかけるマスコミがあり、それにより捜査に支障をきたしたり、ボッシュが恋に落ちたり、上司と対立したり、それらがリーダビリティとリアリティを与えています。それらがなければ、もっとシンプルなものになるでしょう。私としては、それらは長所ではありますが、ラストの唐突感があったため、☆☆☆★というところです。

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)