ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『映像の原則 改訂版』富野由悠季,キネマ旬報社,2011

 富野氏の映像制作に当たっての基本テキスト。「画(え)の動きそのもので流れているもの」である映像がどのような特性があるか、映像・時間・物語(お話)の関係、面白さはどこから生まれるかなど、ベーシックなことが書かれています。

 アニメをみていると、なぜこの作品は面白いのか、面白くないのか、という疑問をもちます。もちろん面白くないというのは、視聴者の私そのものが第一の原因なのですが。本作はそれらの疑問に対して、答えの一つを呈してくれます。私はそのように読みました。たとえば以下の箇所。身につまされます。

 このようなことをふまえて、本当の問題点を指摘するとしたら、物語を映像的に転換する能力がないスタッフがいるからなのです。が、この痛烈な反省は現場的には生まれません。
 なぜなら、制作の進行を最優先させなければならない現場では、“才能の問題は問わない"という暗黙の戒律があるからです。そんなことをすれば、まっさきに自分が外されてしまうという恐怖に取り憑かれているからでしょう。
 しかも、一般的には、映像作品の最終決定権は演出家である監督にあり、監督には作劇能力があると信じられてもいますから、能力の問題が永遠に不問に伏されるのです。(172頁より)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)